メタルボンドと硬質レジン前装冠の違いとは?特徴を解説
硬質レジン前装冠とメタルボンドの構造
メタルボンドと硬質レジン前装冠(ぜんそうかん)は構造が似ていて、どちらも金属の部分と白い部分の二層構造で歯を再現しています。
構造が似ているので一見すると区別がつきにくいですが、金属に貼り付けられている白い部分の素材が大きく違います。メタルボンドではセラミック(陶材)、硬質レジン前装冠ではプラスチック樹脂が使われます。また、それぞれ適用できる歯の部位が違うのと、長期間つけていると起こってくる劣化具合に大きく差が出る場合があります。
メタルボンドクラウンの特徴
メタルボンドとは金属のフレームの上にセラミックを焼き付けた差し歯のことです。表面は劣化に強いセラミックで覆われているので、時間が経過しても変色が起こりません。また、強度に優れており、複数本のブリッジやインプラントの上部構造にも対応できます。
細かな色彩の調整は可能ですが、内面が金属のため金属を使わないオールセラミックと比較すると透明感は劣ります。なお、金属のフレーム部分を貴金属に変更することで金属アレルギーの方でも適用できる場合もあります。
素材:金属とセラミック
製作過程:金属のフレームの上にセラミックを少しずつ盛り上げていき、専用の機械の中で焼き付けて作ります。
メタルボンドの適用箇所:前歯から奥歯まで全ての部位に対応可能。
費用:自費診療
硬質レジン前装冠の特徴
硬質レジン前装冠とは、金属のフレームを樹脂製の特殊なプラスチックで覆った差し歯のことです。金属をベースにしているので強度があり、ブリッジにも対応できます。ただし、表面はプラスチック樹脂なので、割れてしまったり経年劣化により変色や着色が起こる場合があります。また、内面に金属を使用しているので金属アレルギーの方には向きません。
素材:金属と歯科用レジン(プラスチック樹脂)
製作過程:金属のフレームの上に歯科用の硬質レジンを専用の器具で少しずつ盛り上げていき、光で固めて作ります。透明感はほとんどありません。
硬質レジンの適用個所:前歯
費用:小臼歯間の上下各8本ずつ計16本が公的医療保険が適用されます。大臼歯の奥歯に対して技術的には可能ですが、奥歯の場合は基本的に公的医療保険の適用の対象となりません。金属アレルギーの場合に適応となります。
硬質レジンジャケット冠とは?
硬質レジンジャケット冠をご存知でしょうか?硬質レジンジャケット冠とは、金属を使わずに特殊なプラスチック樹脂のみで作られた被せ物の事です。硬質レジン前装冠と混合しがちになるのでこの機会に覚えておきましょう。
「硬質レジン前装冠」の内面が金属であるのに対し、「硬質レジンジャケット冠」は歯科用のレジンで作られたプラスチック製。金属を一切使用しないので金属アレルギーの心配がありません。また、歯の色に近い色調を再現することができるので違和感なく周囲の歯に馴染みます(経年劣化による変色や着色は硬質レジン前装冠と同じように起こります)。さらに、笑うと見えやすい第一大臼歯も保険適用できる場合があります。白い差し歯を公的医療保険の範囲でカバーすることができる、コストパフォーマンスが高い治療といえるのではないでしょうか。
記事監修:歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加。