ホワイトニング・審美歯科治療の医療費控除について
医療費控除とは、医療費が一定金額を超える場合に税金の一部が免除される制度です。
審美的な歯科治療にかかる費用は、決して安い価格はありませんが、医療費控除を活用していただくことで、費用を抑えることができます。ここでは医療費控除を受けるために、いつ、どこで、どのような手続きが必要なのか、手続きのために必要な書類についてなど、医療費控除について詳しくご紹介します。
更新日:2020/09/10
目次
医療費控除とは?
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に、所得税を納税している方が自分自身あるいは生計を一にしている家族のために支払った医療費の自己負担額が
・年間総所得200万以下の方は年間総所得の5%以上
を超えている場合に、一定の金額の所得税の控除を受けることができる制度です。
給与時点で税金が差し引かれている場合は一部が還付金として返還されます。
自営業の方など確定申告で税金を納める場合は、納める金額を少なくすることができます。
支払った年に申告を忘れてしまった場合も、5年前まで遡って医療費控除を受けることができます。
申告の際に必要になる事があるため、書類や医療機関から受け取った領収書、交通費(公共交通機関のみ)や薬代などの領収書などは大切に保管しておきましょう。
また、保険金(生命保険や医療保険など)が適用された場合や給付金(一時金や高額療養費など)が給付された場合には、医療費控除の計算をする際にその金額を差し引くことになっています。
健康保険法の規定により支払いを受ける傷病手当金や出産手当金は、医療費控除の計算時に差し引く必要はありません。
生計が一であれば、収入がある方ならどなたが申告しても問題はありませんが、所得税率の高い方が申告すると税制的にお得になります!
「生計を一にしている家族」とは
生計を一にしている、とは、日々の生活で使用する費用を共有している状態のことです。 医療費控除の場合、必ずしも同居している必要はありません。
・常に別居している子どもの学費の支払い、生活費の仕送りをしている
・別居している親へ常に仕送り、療養費の送金をしている
・仕事や学業の間の余暇に同じ家で生活することを常例にしている
生計を一にしている条件に「被扶養者であること」や「保険証が同一であること」、「同居していること」はありません。
審美歯科治療は医療費控除の対象ですか?
審美的な歯科治療は自由(自費)診療であるため、治療費は全て自己負担です。
公的医療保険が適用される治療ではなく、セラミックやジルコニアで治療を受けた場合、公的医療保険が適用されないため患者さん自身の自己負担額は大きくなります。
しかし、セラミックやジルコニアの審美的な歯科治療でも、お口の機能を回復するための治療であれば医療費控除の対象です。
また、セラミックやジルコニアは「歯科治療で一般的に使用されていると考えられる材料」のため、医療費控除の対象とされています。
審美的な歯科治療の治療費を計算する際には、費用負担軽減のためにも、ぜひ医療費控除をお考えください。そして、治療を受けた年は忘れずに確定申告を行いましょう。
※一般的に支出される水準を著しく超えると認められる特殊なもの、美容目的の治療は医療費控除の対象になりません。
ホワイトニングは医療費控除が適用されません
医療費控除は、病気の予防や美容が目的の治療には適用されません。 ホワイトニングは機能を回復するための治療ではなく「見た目をきれいに整える美容目的の治療」と判断されるため、医療費控除の対象ではありません。
他にも
・予防目的のクリーニング、PMTC
・見た目を改善を改善するための矯正治療
・歯ブラシや歯磨き粉などのセルフケア用品
・デンタルローンや分割払いの利子
・自家用車での通院にかかったガソリン代、駐車場代
・必要と認められないタクシー代
などは医療費控除の対象になりません。
医療費控除についてお悩みの場合は、国税庁あるいは税務署にご相談ください。
医療費控除の申告方法を詳しくご紹介します
医療費控除は確定申告の時に、「医療費控除の明細書」の提出が必要です。 以前は領収書が必要でしたが、2017年からは領収書の提出は不要となりました。 ですが、明細書に記載が必要ですので、医療機関でもらった領収書や通院時の交通費の領収書は大切にとっておきましょう。
「医療費控除の明細書」で申告する医療費控除は、公的医療保険適用治療の自己負担額と自由診療治療(公的医療保険が適用されない治療)の自己負担額で必要な手続きが異なります。
公的医療保険適用治療で自己負担した医療費の控除申告
加入している保険組合から送られてくる「医療費控除のお知らせ(医療費通知)」を医療費控除の明細書に添付します。 その際に、「医療費控除の明細」の中の「医療費通知に関する事項」の項目に
・申告する年内に支払った医療費の額
・生命保険や社会保険、給付金などから補填(支給)される金額
を記載してください。 医療費通知に記載されている支払金額は、実際に患者さん自身が支払った金額と異なっている場合がありますので、保管している領収書を確認して「実際に支払った金額」を記載してください。
公的医療保険が適用されない治療で自己負担した医療費の控除申告
自由診療の場合は、「医療保険控除の明細書」へ必要事項を記入する必要があります。 平成29年から領収書を添付する必要はなくなりました。 しかし、領収書の提出を求められる場合もあります。領収書は医療費控除・確定申告の申告締め切り日翌日から数えて5年間は保管しておくことが納税者に義務付けられています。
(例)2018年分の医療費の医療費控除・確定申告を2019年2月16日に行う →2019年3月16日から数えて5年間(2024年3月15日まで)は領収書の保管が義務
・申告者の氏名・住所
・医療を受けた方の氏名
・病院、薬局など支払先の名称
・使用した交通機関の名称
・医療費の区分(診療・治療、介護保険サービス、医薬品購入、その他の医療費)
・支払った医療費の額(自己負担した金額)
・支払った医療費のうち、生命保険や社会保険などで補填(支給)される金額
医療費控除を申告する場合は、同時に確定申告も行います。
確定申告には
・源泉徴収票
・マイナンバーカード
(マイナンバーカードがない場合は、マイナンバーの記載のある通知カードまたは住民票と身分証明書)
・印鑑(シャチハタは不可)
・金融機関の口座番号
などが必要です。株の売買や不動産所得がある方、土地や建物の売買があった方はその他にも必要な書類があります。
※こちらの医療費控除を申告した場合は、セルフメディケーション税制の控除を受けることはできません
合わせて読みたい>>歯科で医療費控除の対象になるのはどんな治療?
よくあるQ&A
Q1. 審美歯科治療は高額療養費制度は適用されますか?
A:高額療養費制度とは、月初から月末までの1ヵ月間に保険医療機関・薬局の窓口で支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合に、加入している公的医療保険組合へ申告することで自己負担限度額を超えた金額が払い戻される制度です。自己負担限度額は年齢や所得によって異なります。こちらは公的医療保険適用治療で支払った医療費が対象です。
セラミックやジルコニア、ホワイトニングなどの審美的な歯科治療は公的医療保険が適用されない自由診療ですので、高額医療費制度は対象外です。
■70歳未満のかたの医療費自己負担限度額の計算方法
適用区分 | 自己負担限度額 | 多数回該当(4回目以降) |
---|---|---|
住民税非課税のかた | 35,400円 | 24,600円 |
~年収約3,700,000円のかた 健保:標準報酬月額260,000円以下 国保:年間所得2,100,000円以下 | 57,600円 | 44,400円 |
年収約3,700,000円~約7,700,000円のかた 健保:標準報酬月額280,000円~500,000円 国保:年間所得2,100,000円~6,000,000円 | 80,100円+ (総医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
年収約7,700,000円~約11,600,000円のかた 健保:標準報酬月額530,000円~790,000円 国保:年間所得6,000,000円~9,010,000円 | 167,400円+ (総医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
年収約11,600,000円~のかた 健保:標準月額報酬830,000円以上のかた 国保:年間所得9,010,000円超 | 252,600円+ (総医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
高額療養費制度について参考≫高額療養費制度を利用される皆様へ|厚生労働省
Q2.医療費控除が適用される治療費には何が含まれますか?
A:1月1日から12月31日までの1年間に支払った
・処方された医薬品費用
・スイッチOTC※
・通院のための交通費
(公共交通機関のみ。新幹線や飛行機は自己都合の場合は対象外。やむを得ない場合のみタクシーの利用が可能)
・付き添い人の交通費 (小さな子どもやお年寄りなど通院に補助が必要な場合に限る)
が対象です。
自家用車のガソリン代や駐車場代、公共交通機関が利用できる場合のタクシー代、ビタミン剤など健康増進のための医薬品、医師への謝礼や年内に未払いの治療費は対象外です。 また、付き添いは通院に補助が必要な場合に限られ、心配だから付き添う、という場合は医療費控除の対象外となります。
※スイッチOTCとは
従来は医師の処方が必要だった医療用の医薬品の中から、薬局で購入できる一般用薬品に変更(転用)された医薬品です。 胃腸薬や鎮痛剤、抗アレルギー剤などがあり、スイッチOTCに該当する医薬品のパッケージには控除の対象であるというロゴマークがついています。
Q3.クレジットカードによる分割払いやデンタルローンは医療費控除の対象になりますか?
A:クレジットカードの分割払いを利用した場合も、デンタルローンを利用した場合も医療費控除の対象です。
ただし、金利や手数料は対象外です。
デンタルローンをご利用になり、歯科医院からの治療費の領収書が患者さんの手元にない場合は、デンタルローンの契約書の写しを保管しておきましょう。 また、医療費控除を受けられるのは「歯科医院に支払いをした年」です。 デンタルローンの場合は、信販会社が立替払をした年(デンタルローンの契約が成立した年)、クレジットカードの場合は歯科医院でクレジットカードを利用して決済を行った年が医療費控除の対象です。
Q4.医療費控除はいつ手続きをしたらいいですか?
A:医療費控除は確定申告と同じタイミングで行います。
毎年2月16日から3月15日までの1ヵ月の間に申告を行ってください。 医療費控除は5年前まで遡って行えますが、遡って申告する場合も確定申告と同タイミングでの対応です。 確定申告の時期までに保険金や給付金の額が確定していない場合には、見込み金額で計算を行います。見込み額と異なる場合は、修正申告や更正の請求手続きが必要となります。
Q5.医療費控除の書類はどうやって手に入れたらいいですか?
A: 確定申告書
税務署へ取りに行く、税務署から郵送してもらう、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。 税務署から郵送を希望する場合は別途郵送料がかかります。税務署にお問い合わせください。
医療費控除のお知らせ(医療費通知)
加入している保険組合から送られてきます。ご自宅に届く場合とお勤めの会社(事業主)にまとめて送られてくる場合があります。 ご自宅に届かない場合は、事業主に確認してみましょう。
医療費控除の明細
税務署へ取りに行く、税務署から郵送してもらう、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。 こちらも、郵送を希望する場合は別途郵送料がかかります。税務署にお問い合わせください。
Q6.還付金はどのくらい戻ってきますか?
A:還付金は1年間で支払った医療費から、医療保険などの保険金、給付金と10万円(総所得200万円未満の場合は総所得金額の5%)を差し引いた金額が、医療費控除の対象です。 この金額から、申告者が支払っている税金(所得税)の税率をかけた金額が還付されます。還付金は医療費控除の申告をしてから数ヵ月で指定口座に振り込まれます。
【医療費控除の計算式】
(最高200万円)
医療費の合計
補填される金額
※総所得の金額が200万円未満は総所得金額の5%
【還付金の目安】
所得税の目安
【所得税率(平成27年分以降)…総所得金額に対する税率】
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
※出典: 国税庁「所得税の税率」より
セルフメディケーション制度とは
セルフメディケーション制度とは、健康の保持増進および疾病の予防に関する一定の取り組み※を行っている方が、1月1日から12月31日までの1年間に自分自身または生計を一にしている家族のために支払った対象医薬品の金額が12,000円以上の場合に受けられる税金控除の制度です。
対象医薬品は薬局で購入できる医薬品です(医師からの処方が必要ない医薬品です)。 ですが、薬局で購入できる全ての医薬品がセルフメディケーション税制の対象となるわけではありません。
上記でご紹介した、従来は医師の処方が必要だった医療用の医薬品の中から、薬局で購入できる一般用薬品に変更(転用)された医薬品である「スイッチOTC」の医薬品が対象です。 セルフメディケーション税制の対象の医薬品はパッケージに控除対象である事を示すロゴマークがついています。 ロゴマークがついていない商品もありますが、その場合は購入時に受け取る領収書(レシート)に控除対象であることが記載されています。
セルフメディケーション税制を受けられる方は医療費控除を同時に申告することができません。
同一年でセルフメディケーション税制と医療費控除の両方に当てはまる金額を支払っている場合は、控除される税金を計算し、よりお得な控除を申告しましょう。
※健康の保持増進および疾病の予防に関する一定の取り組みとは
・市区町村が健康増進事業として行う健康診査の受診
・予防接種 ・勤務先で行われる健康診査の受診(事業主検診)
・特定健康診査、特定保健指導の受診
・市区町村が健康増進事業として実施するがん検診の受診
「一定の取り組み」はセルフメディケーション税制の申告を行う「申告者」が取り組みを行っている必要があります。生計を一にしている家族が一定の取り組みを行っている必要はありません。