歯が小さい人は矮小歯(わいしょうし)かも?歯が小さい場合の問題点や治療方法を解説
「自分の歯のうちの一つが、他の歯よりも極端に小さいことが気になる。他の人の歯と比べてもはっきりと大きさが異なるので、小さくなっている原因について知りたい。」そんな考えをお持ちの方はいませんか。
他の歯に比べて極端に小さい歯は「矮小歯(わいしょうし)」と呼ばれます。今回は、矮小歯の特徴と原因、矮小歯によって生じる3つのリスク、矮小歯の治療方法について、詳しく解説します。
歯が小さい人は矮小歯(わいしょうし)かも?特徴は?
矮小歯とは、一般的な歯の大きさに比べて著しく小さい歯のことを指します。矮小歯の種類には、全部の歯が小さくなっている場合と、1本もしくは数本の歯のみが小さくなっている場合の2種類があり、後者が多いです。
歯が部分的に小さいことは決して珍しいことではないです。また、矮小歯の形は一定ではなく、円錐状、円筒状、蕾状といった、さまざまな形状があります。
小さい歯になりやすい部位
矮小歯が見られやすい部位は、上顎側切歯(じょうがくそくせっし)と第三大臼歯の2箇所です。上顎側切歯は一番前にある歯の隣に位置する歯であり、笑った時などに見えやすいです。そのため、上顎側切歯が矮小歯になった場合は、審美面における影響が出ます。
第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)とは、いわゆる「親知らず」のことであり、不自然な生え方をしたり、円錐状の形になりやすいという特徴があります。
歯が小さくなる原因
歯が小さくなる理由の一つとして、遺伝の可能性があります。ビタミンDをはじめとする栄養不足、下垂体の機能低下、炎症や外傷のような要因も、矮小歯の原因になるとされています。
特に矮小歯が起こりやすい上顎側切歯と第三大臼歯は、ともに退化傾向が強い歯でもあります。
歯が小さい場合の問題点
極端に小さい歯がある場合、さまざまな影響が出てきます。矮小歯に伴う主なリスクを3つ紹介します。
噛み合わせが悪くなる
歯列の中に一つだけサイズが異なる歯があると、噛み合わせのバランスが崩れることにつながります。矮小歯は通常の歯に比べて非常に小さいため、歯列のバランスが悪くなり、噛み合わせの悪化にもつながることになります。
歯並びの悪化は歯磨きの難易度を高めるため、お口の中に食べ物が残りやすくなり、虫歯や歯周病のリスクを高めます。問題のない側の歯だけで噛む癖がついて筋肉のバランスが左右で非対称になると、骨格や顔が歪む症状を引き起こしたり、頭痛や肩こりが生じ、全身にも影響を及ぼす可能性がある「顎関節症」が起こる原因となってしまいます。
すきっ歯(空隙歯列)になる
歯列の中に矮小歯があると、すきっ歯(空隙歯列)になりやすいです。すきっ歯になると歯と歯の間にスペースが生じます。加えて、歯と歯の間から息が漏れるようになるため、サ行やタ行といった特定の音を発音するのが難しくなってしまうこともあります。
歯と歯の間に隙間が生じることにより、歯ブラシが届かなくなる可能性が出てきます。歯磨きが難しくなってしまうと、虫歯や歯周病のリスクが高まることにもつながってしまいます。
見た目がコンプレックスになる
矮小歯は通常の歯と比べて、大きさだけでなく形状も異なります。外から見た際に矮小歯の部分が特に目立ってしまうケースも少なくありません。
これらの理由によって、人前で笑うことが怖くなってしまったり、コミュニケーションに悪影響が生じる人もいます。矮小歯の存在は、たとえ機能面において大きな問題がない場合であっても、審美面におけるコンプレックスを抱える原因となってしまう可能性があるのです。
歯が小さい場合の治療方法
矮小歯を治療することは、適切な手段を取ることさえできれば十分可能です。この項目では、矮小歯の治療の際に主に用いられる方法について、大きく3つ紹介します。
歯列矯正
矮小歯の影響で歯と歯の間に隙間が生じている場合は、矯正治療によって歯を動かすことによって、それらの隙間をなくすことが可能である場合があります。具体的に4種類の治療法があります。
表側矯正
表側矯正は、歯の表側に「ブラケット」と呼ばれる装置を取り付け、ワイヤーを通して歯を動かしていく治療方法です。 ワイヤー矯正の中でも特にポピュラーな治療法であり、幅広い症例に対応できる点が大きな強みです。治療中に装置を取り外すことができないのも特徴です。
装置を歯の表側につけるため外から見て目立ちやすく、食べかすが装置に引っかかりやすい影響で、虫歯や歯周病などのリスクが高まる点も懸念材料です。 治療にかかる費用の目安は、全体矯正が60〜130万円、部分矯正が30〜60万円です。治療期間は全体矯正が1〜3年、部分矯正が2ヵ月〜1年で、通院頻度は1ヵ月に1回が平均です。
2024年8月 株式会社メディカルネット調べ
裏側矯正
裏側矯正は、歯の裏側にブラケットを装着して、その部分にワイヤーを通していく治療方法です。装置が歯の裏側にあるため、外から見て目立ちにくいです。 一方で、装置が舌に当たりやすいことから滑舌の悪化を招きやすいことに加え、口の中や舌を傷つけやすくなる点には注意が必要です。
また、治療費の目安は全体矯正が100〜170万円、部分矯正が40〜70万円程度と、表側矯正に比べて高額になりやすい傾向にあります。治療期間も全体矯正が2〜3年、部分矯正が5ヵ月〜1年とやや長い点もデメリットとなりますが、 通院頻度に関しては基本的に表側矯正と変化はなく、1ヵ月に1回です。
2024年8月 株式会社メディカルネット調べ
ハーフリンガル矯正
ハーフリンガル矯正は、上の歯は裏側に、下の歯は表側にブラケットを取り付け、それぞれ装置のある部分にワイヤーを通す矯正方法です。外から見て特に目立ちやすい上の歯に取り付ける装置が歯の裏側より目立ちにくいのが特徴です。
下の歯の装置は前側にあるため、完全に目立たないわけではなく、表側矯正に比べると対応しにくい症例があるなど、表側矯正と裏側矯正のデメリットがあります。治療費の目安は全体矯正が80〜150万円、部分矯正が35〜60万円、治療期間は全体矯正が2〜3年、部分矯正が5ヵ月〜1年で、通院頻度は1ヵ月に1回になります。
2024年8月 株式会社メディカルネット調べ
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、マウスピース型装置を歯に装着することによって、歯を動かしていく矯正方法です。透明のマウスピースを使うため目立ちにくいことに加えて、治療中に装置の取り外しが可能なため、食事や歯磨きの際に違和感や衛生面の心配が少なく、ホワイトニングを同時に進行することも可能です。
さらに、治療費の目安は全体矯正が60〜100万円、部分矯正が10〜40万円と、比較的安価なのも強みです。しかし、患者さんには医師の指示を守って装置の使用を続ける自己管理能力が求められ、適応症例も限られます。治療期間は全体矯正が1〜3年、部分矯正が2ヵ月〜1年で、通院頻度は1〜3ヵ月に1回です。
2024年8月 株式会社メディカルネット調べ
補綴治療
補綴治療は、虫歯や打撲で欠けた歯に被せ物をする治療方法です。以下の2種類の補綴治療は矮小歯の治療で頻繁に行われます。
セラミッククラウン
セラミッククラウンは、歯を全体的に削ったうえで、セラミックで作られたクラウンを被せる治療方法です。天然歯のような見た目を実現でき、経年劣化の心配も比較的抑えられることが大きな特徴ですが、他の補綴治療に比べて歯を削る量が多くなってしまう点が懸念材料となります。治療費の目安は、1本あたり10〜15万円となります。
2024年8月 株式会社メディカルネット調べ
ラミネートベニア
ラミネートベニアは、歯の表側にあるエナメル質だけを薄く削ってから、「セラミックシェル」と呼ばれる薄い板を歯の表面に貼り付ける治療法です。セラミックを貼り付け通常の歯のサイズを再現して、隙間を閉じることも可能になりますが、経年劣化によって欠損・破損するリスクが生じます。治療費の目安は、1本あたり5〜15万円です。
2024年8月 株式会社メディカルネット調べ
ダイレクトボンディング
ダイレクトボンディングは、サイズが小さい歯に直接レジンを塗り重ねて修復を図っていく治療方法です(補綴治療ではなく保存治療という分野です)。使用する材料次第でセラミックを使用した時と同様の見た目を再現することが可能になりますが、この手法も経年劣化による欠損・破損のリスクを抱えています。治療費の目安としては、1本あたり2〜5万円程度となります。
2024年8月 株式会社メディカルネット調べ
まとめ
自分の歯の一部が極端に小さい場合、その歯が矮小歯である可能性が高いです。特に、上顎側切歯や第三大臼歯は矮小歯になりやすい傾向にあるため、それらの歯が小さい人は注意が必要です。
矮小歯により、すきっ歯となって見た目が悪くなり、コンプレックスを抱えることにつながってしまう可能性もあります。小さい歯があって見た目が気になる場合、まずは歯科医院に足を運び、医師の専門的な判断を仰いでみてはいかがでしょうか。
【監修歯科医師】
- 歯科医師:古川 雄亮 先生
- 国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事
- 歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加
- 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
[参照URL] https://www.nature.com/articles/s41598-019-51077-0
記事提供
この記事は、株式会社メディカルネット(東証グロース上場)の提供でお届けしております。社内の歯科医師、及び、歯科衛生士、歯科技工士による監修のもと記事の作成を行っております。
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