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審美歯科_ボトックス

美容などで広く聞かれるようになった「ボトックス治療」は、眼科や神経内科といった分野で治療として利用されてきました。さらに、歯科の分野でも使われることがあります。
美容と治療の両方で同じ治療方法が活用されているのは、意外なことかもしれません。ボトックスには筋肉の緊張をやわらげる働きがあります。
それが、美容面では表情ジワやエラ張り、治療面では筋肉のけいれんや歯ぎしり・食いしばり (ブラキシズム) といった癖の改善に効果を発揮します。
本記事では、ボトックスの特徴や歯科での使用方法などについて、詳しく解説します。

掲載日:2021/2/19

審美歯科_ボトックス

1. ボトックス治療とは

「ボトックス」という言葉そのものは商品名にあたります。ボトックス治療は、「ボツリヌストキシン」と呼ばれる毒素成分を活用した治療です。 ボツリヌストキシンは「ボツリヌス菌」から抽出されるタンパク質の一種で、これを筋肉に注入することで緊張をやわらげる効果があります。
ボトックスは、神経伝達物質である「アセチルコリン」の放出を阻害します。それによって脳からの指令が筋肉に行き届かなくなり、 一時的に筋肉が麻痺し弛緩した状態になります。

眼科や神経内科では、眼瞼・顔面けいれんなどの症状に対し、内服薬での治療が難しい場合に利用されてきました。

また、ボトックス治療は美容分野でも活躍しています。例えば、笑ったときに目尻や額などにできる表情ジワは、ボトックス治療の対象となります。 シワは、皮下組織などの形が崩れて凹凸が形成されることによってできてしまいます。そこにボトックス治療を施すことによって筋肉が緩み、 それを補うように周囲の筋肉が肌を引っ張ることで、表情ジワが改善していきます。

また、顔が大きく見えてしまうエラ張りにも有効です。エラが張る原因のひとつとして、エラのあたりにある噛む筋肉(咬筋)の発達が挙げられます。 ここの筋肉をボトックス治療でやわらげることで咬筋が細くなっていき、エラ張りが小さくなっていきます。このほか、顎から首にかけてのたるみ、肥大したふくらはぎ、 わきがや多汗症などの改善にも使われることがあります。

このように、さまざまな分野で活用されているボトックスですが、主成分であるボツリヌストキシンは強い毒素でもあります。 ただし、医療で使用されるボトックスは身体に悪影響の無い範囲で使用しています。

2. 歯科では歯ぎしりや食いしばりの改善として活用

それでは、歯科ではボトックス治療をどのような場面で活用するのでしょうか。

ボトックス治療で使用するボツリヌストキシンは、筋肉に注射することで緊張を緩和する働きがあります。 筋肉の緊張緩和の促進作用を有することから、歯ぎしりや食いしばりなどの癖によって肥大した咬筋(食べ物を噛むときに使う、顎の外側にある筋肉) を弛緩する上で使用されることがあります。

咬筋肥大が起きると、歯ぎしりや食いしばりのほか、顎の痛み(顎関節症)、エラの張り、頭痛、肩こりといった全身症状のほか、血行不良やストレスなども起こり得ます。 また、歯ぎしりや食いしばりは、お口の中の頬や舌などを傷つけることもあります。 組織を繰り返し傷つけてしまうと、患部が角化して口腔がんの発症につながる可能性もあります。

歯がすり減ったり、詰め物が破損したりするほど食いしばりが強い方は、噛む力をコントロールする必要があります。 マウスピースの装着により歯を保護することも可能ですが、ボトックス治療も食いしばりを緩和する目的で行われることもあります (保険適用ではありません)。

美容分野では小顔治療、シワを取る治療などで活用されるボトックス治療ですが、歯科の領域では美容目的ではなく、体の機能の回復を目的として活用されています。 歯科では歯そのものだけでなく口周りも診断の対象となります。食いしばりなども治療できるということを覚えておくとよいでしょう。

3. ボトックスの効果はどのくらい持続するの?

歯科でのボトックス治療は、外科的な手術を必要としないので時間がかからず、患者さんへの負担も大きくありません。 薬剤を注入するのに必要な時間は、10分ほどになります。針を刺すときの痛みはあるものの、注射後に正常反応として少し重く感じる程度です。 ダウンタイムもなく、そのまま帰宅することができます。

歯ぎしりや食いしばりの治療におけるボトックス治療の効果は、永久的なものではありません。効果が続く期間は、3~6ヵ月ほどが目安となり、 定期的にボトックスを筋肉に打つ必要があります。

このように、ボトックス治療は一時的に歯ぎしりや食いしばりの癖を解消することができますが、あくまで対症療法であり根本治療ではないことに注意してください。

歯ぎしりや食いしばりが強いときの対策として、マウスピース(ナイトガード)をはめるという方法もありますが、 こちらも歯ぎしりや食いしばりによるダメージを抑えられるものの、根本治療というわけではありません。

歯ぎしりや食いしばりは日常生活のストレスが影響しています。普段からストレスをため込まないように十分注意しましょう。 ただし、ストレスが急に無くなることは難しいです。歯ぎしりや食いしばりの癖がなくなってきたと実感するまでは、ボトックス治療を定期的に受けると良いかもしれません。 また、より根本から症状を改善させたいという場合は、一度歯科医師にご相談ください。

【監修歯科医師】

総監修 歯科医師:古川 雄亮 先生
  • 歯科医師:古川 雄亮 先生
  • 国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事
  • 歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加
  • 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
    [参照URL] https://www.nature.com/articles/s41598-019-51077-0
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記事提供

この記事は、株式会社メディカルネット(東証グロース上場)の提供でお届けしております。社内の歯科医師、及び、歯科衛生士、歯科技工士による監修のもと記事の作成を行っております。

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