ジルコニアとは?審美歯科治療での使用について詳しく解説
皆さん、ジルコニアと聞いて何をイメージしますか?アクセサリーに使用される人工ダイヤモンドを思い浮かべる方が多いかもしれません。実はジルコニアという素材は歯科でも頻繁に使用されているんです。見た目を美しくする審美歯科治療の選択肢として希望する方が増えてきている素材です。ここではジルコニアが審美歯科ではどのように使われているのか、素材の特徴やメリット・デメリットをご紹介します。
1. ジルコニアとは?
ジルコニアは歯科の治療では虫歯治療後の被せ物の治療で頻繁に使用されています。ジルコニアとは何なのか?まずは、解説していきます。
素材の特徴
ジルコニアはジルコニウムの酸化物である、二酸化ジルコニウム(ZrO2)が正式な名称です。ジルコニアは透明でダイヤモンドのように高い屈折率を有することから人工ダイヤとも呼ばれています人工ダイヤと呼称されていることから推測されるように、宝飾品としての活用が多い素材です。
セラミックとジルコニアは違うの?
セラミックとジルコニアは歯科の分野では審美歯科の治療でしばしば使われています。金属やレジンなどと比較しても強度に優れ、見た目も優れており、身体に優しい材料です。セラミックとジルコニアには多くの共通点があり、ジルコニアはセラミックの一種ではあります。しかし、全く同じものというわけではありません。
素材の違いを説明すると、セラミックは陶器で使われる二ケイ酸リチウムガラスです。一方、ジルコニアは二酸化ジルコニウムです。セラミックは金属と比べると割れやすいですが、ジルコニアはセラミックよりも割れにくい特徴を有しています。ジルコニアの欠点は、セラミックのように繊細な色の表現が難しいことです。
▲ジルコニアは歯科の被せ物以外に、宝石やスペースシャトルにも活用されている。
歯科以外ではどんなものにジルコニアが使用されてるのか
ジルコニアの素材について説明したところで、歯科以外でのジルコニアの活用を紹介します。
宝飾品
人工ダイヤモンドとして、アクセサリーの製造に使われています。
工業
耐火材・光ケーブルに使われ、スペースシャトルの断熱材などにも使われています。
医療
歯科以外の医療では、人工関節に使用されることが多いです。
2. 審美歯科領域ではどのように使用されているのか
ジルコニアは歯科では頻繁に使われています。例えば、大きく歯を削った後に被せるクラウン、歯が無くなった後の両隣を削って被せるブリッジなど、活用は様々です。
コバルトやクロムなど歯科で使われる金属に対してアレルギーがある場合、代わりに適用することが可能です。ジルコニアは見た目も非常にキレイなので、審美歯科を中心とした歯科医院ではよく使われています。
以下、審美歯科領域でのジルコニアの活用について詳しく紹介していきます。
紹介している値段は部位(前歯・奥歯)や補償内容などにより異なりますので、あくまで参考程度に留めておき、詳しくは治療を受ける予定の歯科医院にお問い合わせください。
ジルコニアインレー
インレーは虫歯を削った後の銀歯の詰め物をイメージしてもらえれば良いと思います。金属やプラスチック、セラミック、ハイブリッド(プラスチックとセラミック)が使用されていました。
噛む力で割れてしまうといった強度的な問題があったことから、強度の高いジルコニア製のインレーが登場しました。ジルコニアはセラミックのように細かい色を出すことができないので、見えにくい奥歯の治療に適しています。
自由診療のため、歯科医院によって値段設定が異なります。セラミックインレーと同様に、4~5万円の治療費を設定しているところが多いです。
フルジルコニアクラウン
ジルコニアのみを使ったクラウン(被せ物)です。セラミックのクラウンを使用した場合に割れることがあるので、ジルコニアでできた被せ物を使用します。ジルコニアでも見た目はキレイですが、セラミックほど細かい色の表現はできないため、主に奥歯での治療に用いられます。
自由診療のため、歯科医院によって値段設定が異なります。医院によっては被せ物に10年間の補償が付いたりするため、3~15万円と治療費には医院によって大きな幅があります。
ジルコニアフレームの上にセラミックを焼き付けたクラウン
ジルコニアの強度を持つキレイな被せ物を入れたいという患者さんの要望にも応えられる被せ物です。被せ物のフレーム(内側)にジルコニア、外側にセラミックを焼き付けます。
セラミックの中でも非常に優れた審美・耐久性を有しているため、奥歯だけではなく、前歯にも使用が可能です。
自由診療のため、歯科医院によって値段設定が異なりますが、値段はジルコニアやセラミック単独のものより高額になります 。医院によっては被せ物に補償が付いたりするため、10-15万円と高めの設定になっています。
ジルコニアインプラント
市場に出回っているインプラントは主にチタンでできた製品です。チタン製のインプラントも身体に優しい金属です。
ジルコニアはチタンよりも身体に優しく、インプラント周囲炎(インプラントの周囲が歯周病のような状態になりインプラントが動揺してくる状態)も起きにくいという研究報告もあります。
ジルコニアインプラントの金額ですが、自由診療のため、歯科医院によって値段設定が異なります。歯の根っこの部分であるインプラント体が40~50万円程度で、インプラントの上に装着する被せ物が15万円程になることがあります。
3. ジルコニアのメリット・デメリット
ここからは、ジルコニアのメリットとデメリットをそれぞれ5つ紹介します。
ジルコニアのメリット
①金属アレルギーにも対応可能
保険診療でよく使われる歯科金属(コバルトやクロム、ニッケルなど)にアレルギーがある方にも適用可能です。
②金属やプラスチックに比べて審美的に優れている
金属やプラスチックよりも歯の色に近いので、見た目が良いです。
③歯茎が黒くならない
土台を金属ではなくジルコニアにすることにより、歯茎が黒く透けて見えることがありません。
④強度が強く、奥歯でも使用可能
見た目がキレイで、奥歯にも適応できるほどの強度もあります。
⑤身体に優しい安全な素材
口の中の金属による全身への悪影響を防ぐことが可能です。
▲ジルコニア(左)・セラミック(右)の被せ物のイメージ図 ジルコニアの被せ物は真っ白だが、セラミックの被せ物では天然歯の色調を表現しやすい。
ジルコニアのデメリット
①ジルコニアと噛み合う歯が割れる可能性があり
ジルコニアは非常に硬い素材です。噛み合う歯(対合歯)が割れる可能性が少なからずあります。
②技工精度
歯科技工士の手作業ではなく、コンピュータで削り出しを行うため、精度が落ちる可能性があります。
③虫歯や歯の破折など問題が出た時に除去しにくい
非常に硬い素材のため、一旦セットするとバーではジルコニアを削りにくく取り除くことが困難になります。
④審美性はセラミックに劣る
セラミックは歯の色の表現を透過性を出すことによって繊細に出すことが可能ですが、ジルコニアの場合は難しいため、前歯で使用することはさほどありません。前歯と使用する場合、セラミックとジルコニアのハイブリッドを使用することが多いです。
⑤非常に高価
非常に硬く、審美性も良く、奥歯でも使用できるセラミックということで、ジルコニアクラウンはセラミッククラウンよりも高くなります。
4.ジルコニアの素材の特徴やメリット・デメリットを理解して選択しましょう
審美歯科でしばしば使われる材料であるジルコニアの特徴に加えて、メリット・デメリットを中心に解説しました。残念ながら、ジルコニアを使った治療は見た目を改善する要素が強いため、前歯や奥歯などの場所にかかわらず公的医療保険が適用されません。
そもそも、公的医療保険の適用範囲内で行える治療は患者さんのニーズに最低限応えるためのものです。しっかりと噛むことはできても見た目までは思った通りに改善されない可能性があります。一方、ジルコニアなどのセラミックを使った自由診療での治療では患者の高い希望にも応えるものです。高額にはなりますが、しっかりと噛め、見た目も改善できる治療です。
自由診療の場合、歯科医院によっても値段設定や補償制度などが異なります。自由診療による治療を受ける際は、担当医と相談、話し合いをしっかりと行うようにしましょう。「値段は高くても良いから本来の歯と同じ見た目の被せ物を入れてしっかりと噛みたい」といった強い願望があるのであれば、ジルコニアを一度検討されてみてくださいね。
【監修歯科医師】
- 歯科医師:古川 雄亮 先生
- 国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事
- 歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加
- 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
[参照URL] https://www.nature.com/articles/s41598-019-51077-0
記事提供
この記事は、株式会社メディカルネット(東証グロース上場)の提供でお届けしております。社内の歯科医師、及び、歯科衛生士、歯科技工士による監修のもと記事の作成を行っております。
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